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福岡地方裁判所 昭和45年(ワ)799号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、原告の請求原因事実中原告が福岡県知事の許可を受けた宅地建物取引業を営むものであること、被告加来が原告に対し本件不動産を金五三〇万円で売却の斡旋仲介を依頼したこと、被告中野が原告に対し本件不動産を買受けたい旨の意思表示をしたこと、原告が被告加来に本件不動産の買主が現われた旨を告げたこと、その際被告加来が原告に右被告が現実に金六〇〇万円を取得できるよう売買代金を定めて欲しい旨申入れたこと、被告中野が原告に対し原告の仲介料等一切合算して金六〇〇万円ならば即金で買受けてもよい旨申出たこと、被告加来が原告に対し本件不動産の売却斡旋依頼を取消す旨の意思表示をしたこと被告等両名間に昭和四五年二月二七日金六〇〇万円で本件不動産の売買契約が成立し、同年三月三日被告加来より被告中野に本件不動産の売買を原因とする所有権移転登記が完了していること、福岡県宅地建物取引業者の報酬額等に関する規則が存在すること、はいずれも当事者間に争がない。

二、1<証拠>および弁論の全趣旨を総合すると次の各事実が認められる。

(一) 原告は昭和三五年頃から前記のとおり宅地建物取引業を営んでいるものであるが、昭和四四年八月初旬頃初対面でありそれまで一面識もなかつた被告加来が原告を訪れ本件不動産を売却したいのでその斡旋仲介をしてもらいたい旨の申出をした。原告代表者が被告加来と応待し、売却の条件等につき話合つたが、右加来としてはその当時最低限金五三〇万円を必要とするので、同人が現実に収得する金額は右金五三〇万円を割らないよう売却してもらいたいと述べたので原告代表者もこの金額に前記規則に認められている範囲内の手数料を算出し、買主によつては値切る人もいるので最低金五三〇万円に金三〇万円を上積みし金五六〇万円で売りに出しましようと話し、被告加来も右売却条件を了承した。

(二) 原告代表者はその後登記所で本件不動産を調査し、一〇日程経て当時原告の使用人であつた訴外藤木寿三をして本件不動産の現状を調査させ、居宅の間取り等の図面を清書させ売却物件として掲示した。同年一〇月中旬になつて佐賀県武雄市に居住する清水という者だが適当な居宅の売却物件は存しないかといつて婦人が原告を訪れたので原告はこれに応待し色々説明している内に同女は被告加来が売却に出した本件物件に着目し該物件を見せて欲しい旨申出たので、原告は前記藤木をして同女をその所在地に案内せしめた。その後右清水と売却について交渉を重ね、同年一二月初旬になつて、右物件が気に入つたから買受けることとし自分の父親に見分してもらうということになつた。同年一二月一〇日になつて右清水の父親と称して被告中野が原告を訪れたので、原告としては右物件を説明し、所在地を地図で示し、前記藤木をして本件不動産の現状を見分してもらうためその所在地へ案内せしめた。それから六日程経つて被告中野から原告に、右物件は娘から金五六〇万円だと聞いていたのでその値段で買受けたいから売主の方へ連絡を頼むという申出がなされた。そこで原告は前記のとおり被告加来に右事実を告げたところ、その時点になつて被告加来から、本件不動産は金六〇〇万円の価値があると思料するので、同被告において現実に取得できる金額につき前記のとおりの申出を受けた。原告としては以前売却条件について話合つた際金五六〇万円という線で合意ができていたのに今更金六〇〇万円といわれ右代金を買主に告げたら契約は成立しないから、従前の合意どおり金五六〇万円で売却して欲しい旨被告加来に懇請した。しかし同被告はあくまでも最低現実に収得する金六〇〇万円を固執するので結局原告としても右金六〇〇万円に手数料として当初の合意のとおり金三〇万円を上積みした六三〇万円を売買代金として買主の方へ伝える旨右被告に述べ同被告の承諾を得た。しかる後原告は被告中野に対し金六三〇万円でないと売買契約は成立しないので売買代金を奮発して欲しい旨申入れた。同年一二月二九日になつて被告中野から原告に対し前記のとおり即金六〇〇万円なら買受けたい旨の申出がなされたので、原告としては被告加来に右事実を告げ金六〇〇万円で売却し、その代金中から手数料を出して欲しい旨述べた。しかし被告加来はその際も原告の右申出を拒絶しあくまでも現実収得金が金六〇〇万円でなければ売却しない旨述べた。そのため原告としてもやむを得ず、その話を残したまま年末を迎えたのである。本件不動産売買契約の成立を期する原告は年が明けた昭和四五年一月中旬過ぎ頃被告加来に対しては売却代金の減額と、被告中野に対しては買受代金の増額を懇請し双方に交渉を進めた。しかるに同年二月二八日頃原告が何とか妥協額を見出そうと被告加来宅を訪れたところ、被告加来から本件不動産の売却につきその仲介依頼を取消す旨前記のとおりの申出を受けたものである。原告としては、被告加来から右のとおり本件不動産の売却斡旋依頼を断わられたが、何とか契約を成立させたいと願い、被告中野には、被告加来の右意思表示を告知しなかつた。また被告中野からも本件不動産買受けにつき特段の意思表示を受けなかつたものである。

(三) 前記藤木は昭和四四年一二月三〇日で原告を辞めたのであるが、被告等から被告等間の本件不動産についての前記売買契約の右金銭授受の仲介を依頼され、これを引受けた。しかし右契約は既に実質的に右両者間で成立していて単に金銭の授受の問題が残されているに過ぎなかつた。かくして被告等間に右売買契約が成立し登記も完了したこと前記のとおりである。

<証拠判断略>

2(一) 右認定のとおり全然面識のなかつた被告加来と被告中野との間に本件不動産の売却につき前記売買契約が成立したのは、原告の仲介が契機となつており、その売買代金も原告が右両者の間に立ち斡旋仲介をしてその結果被告加来が最終的に原告に告示した売却代金額と被告中野が原告に対し告示した買受代金額と一致するものであること就中被告中野を本件不動産の現状を見分させるため本件不動産の所在地に案内したその当時の原告の使用人前記藤木が前記認定の限度においてではあれ被告等両名間の前記売買契約に関与していること等から原告の本件不動産の売買仲介を原因とするものであることが認められよつて原告の右仲介と被告等間の前記売買契約成立との間に因果関係の存在を首肯せざるを得ない。

(二) 原告と被告加来との間の本件不動産売却に関する仲介契約は、所謂準委任であつてその解約は当事者の自由と解されるところ、前記認定にかかる本件事実関係の下においては被告加来が原告に対してなした右契約の解除は信義則上許容し得ず、したがつて被告加来の原告に対する前記契約の解除はなかつたものと認めるのが相当である。(鳥飼英助)

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